メッセージ 13代目当主 蒲 敦子
もっとあなたのそばに白真弓
蒲酒造場は、宝永元年(1704年)に創業した蔵元です。それから300年の永きに渡り、水豊かな米処飛騨古川の地で、こつこつと酒造りをしてまいりました。
私は、初代・蒲登安から13代目。平成28年に代表取締役に就任しました。歴史ある蔵元の娘として生まれ、伝統ある「蒲酒造場」を引き継ぐ重みをひしひしと感じる一方、これからの蒲酒造場を築いていく楽しみも感じています。
しかしながら、昨今の日本酒業界を取り巻く環境はとても厳しいと言わざるを得ません。
よく飲まれる日本酒は地酒からスーパーや量販店で売られる紙パック酒に変わり、また、日本酒離れという言葉の通り、晩酌のお酒も焼酎・発泡酒・缶チューハイ・リキュール類が多くを占めるようになってきました。
地酒の価値が、特に地方の小さな蔵元の価値が埋没していく時代、蒲酒造場はどんな蔵元でなければいけないか。
この難しい問いに対して答えを探すことが、私に与えられたミッションだと思っています。
私は二つのコンセプトで新しい蒲酒造場を創っていこうと思います。
「白真弓」をもっと多くの人に
ひとつは、当蔵の酒銘「白真弓」をもっと多くの人に知っていただくことです。これは伝統を守るという意味も含まれますし、さらに進化し品質を追求するという意味も含まれます。
「白真弓」は、大吟醸、吟醸、純米酒、本醸造、普通酒、スパーリング清酒、また、季節限定酒などのラインナップがありますが、みな、「コクがあってなおかつ後味がすっきり」する味とご評価いただいています。
日本に蔵元はたくさんありますが、その味はそれぞれの素晴らしさがあります。米、水、気候、糀の作り方、酒母、酵母などの違いによって、その地域の風土にあった味を造り出しますから、日本酒の美味しさの基準は一方的に決められないものがあります。
ましてや、品評会などで賞をとったから、すべての人が美味しいと思うわけではありません。
「コクがあってなおかつ後味がすっきり」するお酒、白真弓。
飛騨の水と飛騨の酒米「ひだほまれ」と飛騨の気候から造り出される白真弓、300年続いた白真弓の味を誇りに、もっと多くの日本酒、地酒を愛する人に白真弓を知っていただくためにもっともっと力を入れいきたいと思っています。
どこまでも白真弓らしく
もうひとつは、白真弓の原点を忘れないことです。
白真弓の原点とは「人に寄り添い、その人の人生と共にある酒」です。
地酒とは本来地域とそこに住む人々と密接な関係にあるもの。
地酒は、何十年、いやそれ以上、地域の人に飲み続けられている歴史があり、そして地酒と共に地域に住むそれぞれの人の人生があるはずです。
まさに白真弓は飛騨古川の人たちと共に歩んできた歴史です。
飛騨古川が今のように日本有数の観光の街として知られるようになる、もっともっと前の時代から、祭、神事、宴会、お祝い、飛騨の料理と共に、いつもそばには白真弓がありました。
飛騨古川の人たちと共に歩んできた白真弓、飛騨の水、米、気候から造られた白真弓。「白真弓を通して、飛騨を感じていただきたい」これが私の願いです。
蒲酒造場は、受賞、評価を目的とするのではなく、あくまでも人に寄り添う酒造りが目的です。
「白真弓は、嬉しい時、悲しい時、また、寂しい時、いつも人生の傍に寄り添ってくれた酒」このように想ってくれること。
私は、蔵元本来のミッションはここにあるのではないかと思います。
私たちは飛騨の小さな蔵元です。
なかなか大きなイノベーションは起こせないかもしれません。
しかし、「もっとあなたのそばに白真弓」の理念のもと、どこまでも白真弓らしく、「飛騨の酒、蒲酒造場の白真弓は素敵なお酒だね」と言っていただくお客様がもっともっと多くなるように、酒造りに、未来の蒲酒造場のために、邁進していきたいと思います。